深夜、バスルームのドアを叩くもの

先日、私に起こった話を聞いてください。

奥さんが出張で不在だった夜のこと。
家には私ひとり。
お風呂にゆっくり浸かっていたとき。

その日、たまたまSNSで流れてきた“怖い話”のショート動画を、うっかり見てしまった私。
実は「ホラー」が大の苦手。
もうビビリモード全開。
鏡や天井、カーテンの影まで、すべてが怪しい。

そして訪れる、どうしても目を閉じなきゃいけない瞬間──
そう、頭からシャワーを浴びるときです。

「早く終わらせよう…」と急いでシャンプーを流していた、そのとき

ドン

…え?。

心臓が跳ね上がる。
いや、気のせいでしょ、と自分に言い聞かせながら、再びシャワーを浴び続けると──

ドン

ドン

はっきり聞こえる。
しかも近い。
下手したら、すぐ真後ろから。

いや、いやいやいや。
奥さんにイタズラされたことはあるけど、今日はひとり。
夜に帰ってくる予定なんて聞いていない。

振り向けないまま急いで頭を流す。
でも音は止まらない。

「ドン」「ドン」「ドン」

明らかに、何かが、何かを叩いてる。

もう吐きそう。
意を決して、鏡越しに後ろをチラッと見るけど──
誰もいない。

ホッとした、次の瞬間。

 「バンッ!!!!」

勢いよく開くお風呂の扉。
声も出せずに飛びあがる私。

「ガサガサッ!!」という音と共に何かが足に触れて。

ついに「うぁぁぁぁ!」と声が出て。




リクガメのトビオちゃんでした。
いつの間にかお風呂を開けられる力を身につけていたようで、
普段は夜ぐっすり寝ているはずが、この日に限って起きていたらしく。
私のことを探して、バスルームまでやってきたようでした。

犯人はわかっても、心臓の鼓動はしばらく収まらず。
裸のまま壁に張り付いてました。

落ち着いてから「トビオ…」と声をかけて背中を撫でると、
何事もなかったかのように、すたすたと寝床へ帰っていきました。

…はぁ~怖かった。びっくりさせないでよ…

でも、私を探してきてくれたんだと思うと、ちょっとだけほっこりしたのも事実。

可愛いから許すけど
次はできれば、昼に会いに来て。頼むから。

投稿者プロフィール

藤田 勇気
藤田 勇気くれたけ心理相談室(仙台支部)心理カウンセラー
宮城県仙台市・富谷市を中心にカウンセラーとして活動しています。
オンラインカウンセリングもご利用いただけます。

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