言葉が語る私たちの姿

こんにちは。
あなたはこの表現を見て、どんなことを考えますか?あなたは自分を呼ぶときなんと呼びますか?
「何の話?」って思いますよね。
実はこれ、これは2011年に発表された、心理学の論文の表題の一部なんです。
内容が興味深いと話題になり、私も面白く思ったので皆さんにも共有してみよう、というわけです。
ちょっと長くなりますが、雑学程度に見てみてくださいね。

言葉選び

この論文の正しいタイトルは、「The Secret Life of Pronouns: What Our Words Say About Us」
日本語にすると、「代名詞の秘密:言葉が語る私たちの姿」 という感じ。
この論文は、日常の言葉遣いがその人の心理状態や社会的関係を反映している、と考えて、
特に、「代名詞(「わたし」「あいつ」など)」に注目し、その使用頻度やパターンが
どのように人々の心理や行動を示すかを研究しているものなんです。

この研究では、大学生の日記から著名人のスピーチまで、大量の文章を収集し、
どんな代名詞や感情を表す表現の頻度(数)をひたすら数えています。これだけで大変な作業ですね!
さらに、実験として、性格の異なる人に自己紹介をしてもらったり、
わざとストレスのかかる課題を被験者に与え、言葉遣いがどうなるかを分析したりもしています。

これによって、以下のことがわかったんです。
1.心理状態の反映
抑うつ
抑うつ状態の人は、一人称単数代名詞(例:「」)を多く使用する傾向がある。
これは、抑うつが自己中心的な思考や内向的な視点に関連しているためと考えられたためです。
ストレス
ストレスを感じている人も、一人称単数代名詞の使用が増加する。
これは、ストレスが自己に対する集中を高めるためと考えられています。

2.社会的関係の反映
リーダーシップ
効果的(≒優秀)なリーダーは、二人称(「あなた」)や
三人称(「彼」、「彼女」、「彼ら」)の代名詞を多く使用する。
この言葉たちがチームメンバーとの関係性を強め、協力を促進するようですね。
人間関係
親密な関係にある人々は、相互の代名詞(例:「私たち」)を多く使用する。
この呼び方によって、共同体であるという意識や互いの連帯感を示しているそうです。

3.その他
感情の表現
感情が強く現れる場面では、感情を表す語彙が増えるだけでなく、
代名詞の使用パターンも変化します。例えば、怒りを表現する際には、
二人称代名詞(「あなた」)が増える傾向があります。

さて、これらが何を意味していたかというと、言葉遣い、特に代名詞の使用が、
個人の心理状態や社会的関係を深く反映していることを示している、ということなんです。
つまり、言葉の選び方が、無意識のうちに私たちの内面や関係性を表現しているとも言えるのですね。

例えば、「自分の言葉遣いが荒くなったな…」とか「あの人の話し方が変わった気がする…」とか
思うところがあったときは、その人に何か変化が起きているサインなのかもしれません。
自身のセルフケアの指標にもなるかもしれませんし、周りの変化に気づいてあげられるチャンスかも。
もちろん、この論文がすべてのことに当てはまるわけではないですが、
こんな考え方もあるんだな~と紹介してみました。
たまに論文のご紹介もしてみようかなと思っているので、気になったら論文カテゴリをチェックしてくださいね。

投稿者プロフィール

藤田 勇気
藤田 勇気くれたけ心理相談室(仙台支部)心理カウンセラー
宮城県仙台市・富谷市を中心にカウンセラーとして活動しています。
オンラインカウンセリングもご利用いただけます。

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