それってOK?それともダメ?──境界線のあいまいさ
学生のころ、私は解剖学や免疫学を学んでいました。
ウシやブタの解剖実習も経験し、大学院生になると、
後輩たちの実習をサポートするようにもなりました。
特に印象的だったのは「解剖実習」。
生きた動物を屠畜し、
その命の重みや体のつくりを学ぶ貴重な時間です。
この実習、毎年いろんな反応が起きます。
「かわいそう」
「怖い」
「見ていられない」
気分が悪くなったり、涙が出たり、失神する人も珍しくありません。
でも、それはとても自然なこと。
命に触れる感覚を持っている証です。
──ところが、時間が経つと不思議な変化が起こるんです。
解体が進み、姿が変わっていくと、
あれほど辛かった空気がふっと和らぐのです。
「この部分、霜降りだ!」
「ここ、おいしそう」
なんて声が聞こえ始めます。
やがて、食味試験という名の焼肉パーティーに突入。
本当は部位ごとの味や質の違いを勉強する場なのですが…
「ココ、なんで売ってないの?うまい!」なんて笑顔も広がるんです。
さっきまで涙ぐんでいた人も、箸を持ってニコニコ。
命を「動物」として見るか、「食材」として見るか。
視点が変わると、心の受け止め方もこんなに変わるんだなと思いました。
これを今振り返ると、思うのです。
「何がOKで、何がダメか」なんて、あいまいなんだなって。
ある人にとっては平気なことが、
別の人にとってはつらかったりする。
そして自分自身も
環境の変化や時間の経過で、
ボーダーが変わることだってあるんですよね。
でも、その変化も受け入れながら、
誰かの感覚を否定せずに、ちがいを認め合えたら。
そんな柔らかくて豊かな在り方ができたらいいなと今は思うのです。
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